Japan[製品情報]

Full Digital Soundを体験した評論家の最速レビュー(前編)

これぞ劣化がないことの証し!“フルデジタル”ならではのリアルさを体感

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会田 肇

カーAV評論家

1956年茨城県生まれ。自動車雑誌編集者を経てカーナビゲーションやカーAV機器を中心とした取材活動を行う。ITS分野への関心も高く、最近ではADAS(先進運転支援システム)関連にも活動範囲は及ぶ。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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フランクフルトモーターショーに続く第二世代Full Digital Soundの2回目の試聴。前回の時に比べて音の硬さが取れ、リアル感はさらに高められた。今春発売するのを前にその魅力をレポートする。

省電力化ができて、しかも高音質。そんな“夢のカーオーディオ”として誕生したのがクラリオンの「Full Digital Sound」だ。今年春からの第二世代システムの本格的販売に先駆け、スバルBRZでそのサウンドを試聴する機会を得た。私にとってFull Digital Soundの試聴は昨年のフランクフルトモーターショーに続く2度目。その時はイベントに何とか間に合わせた、スピーカーのエージングも不十分な状態であった。それが今回は、試作機であることは同じであるものの、フランクフルトで感じた音の硬さはほとんど解消。それでいて高い解像度を活かした緻密さとデジタルサウンドらしい切れの良さを再現できていた。その意味で今回がFull Digital Soundの特長を体感できた初の機会になったとも言える。

試聴は、定位ポイントを『ダッシュボード中央前方』と『運転席前方』の二通りを体験する中で行われた。最初は開発者が選んだ『ダッシュボード中央前方』から聴いてみる。開発者によれば「左右の広がりを意識して設定した」というだけあって、確かに左右への広がり感はある。でも音像が曖昧になり、どことなく落ち着かない。そこで次にフルデジタルサウンドプロセッサー・Z3を使って『運転席前方』に切り替えてみた。すると右方向への広がりはなくなったものの、抜群の安定感を再現しつつも見事なまでのリアルさを伝えてきた。冒頭に述べたように音の硬さも解消されており、ワンタッチでプリセットしたモードに切り替えられるのも第二世代Full Digital Soundの魅力なのだ。

今回の試聴は車両へインストールした状態だけで行われ、Full Digital Soundを“素”の状態で聴けたわけではない。それでも好みのジャズボーカルを聴いたときの、声の生々しさは半端じゃなかった。声が気持ちよいほどに伸び、声がかすれて消えるところまでが見事に表現できていたのだ。その瞬間、「劣化がないサウンドとはこういうことなのか!」と素直に感じた次第だ。電動化が進む新時代に向けたカーオーディオシステムの進化に大いに期待したい。

省エネだけじゃない! この新世代の音は聴いて確かめるべし!

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石田 功

カーオーディオジャーナリスト

音響の勉強をしていた学生時代は、友人のインディーズバンドのレコーディングの手伝いなどをしていたが、その後、雑誌媒体主体の編集プロダクションに勤務。音楽好きとクルマ好きが高じて、音楽雑誌、自動車雑誌、カーオーディオメーカーのカタログ、マニュアル等の編集や製作に携わる。 90年代初頭には、編集プロダクションを辞め、フリーランスライターに。以後、自動車雑誌、カーオーディオ専門誌にカーオーディオとカーナビを中心とした記事を書き続ける。 現在、おもな執筆誌は、自動車雑誌が、CAR and DRIVERなど。カーオーディオ専門誌はオートサウンド、カーオーディオマガジンなど。Web媒体はWebCGなど。 ミュージックペンクラブ会員
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新開発車載専用LSIは音質を重視して独自設計。従来はなかったサブウーファーをラインナップしワイドレンジ化を図った新クラリオン・フルデジタルサウンド・システムはキレが良く高解像度な音が印象的だ。

これまでのオーディオの常識でいうと、CDなどのデジタル音源はD/Aコンバーターでアナログ信号に変換されたのち、パワーアンプで増幅してスピーカーを駆動する。いわゆるデジタルアンプといわれるD級アンプも、増幅時に扱う信号はアナログである。ところが、その常識を覆すのがクラリオンのFull Digital Sound システム。D/Aコンバーターは存在せず、フルデジタルスピーカーへダイレクトにデジタル信号を送り込んでフルデジタルスピーカーを駆動するのだ。

その辺を理屈を説明すると長くなるのではしょるが、従来システムで必要なD/Aコンバーターやアンプが不要なため、1.システムがシンプルかつコンパクトに収まる。2.効率が良いため極めて少ない消費電力で音楽を再生できる。3.フルデジタルスピーカーをデジタル信号で直接駆動するため原音に忠実である。といったメリットがある。消費電力が航続距離に大きく影響する電気自動車やハイブリッド車などには特に大きな恩恵をもたらすオーディオ・システムといえる。


このFull Digital Sound システム。クラリオンでは2世代目となる。初代は01DRIVEと名付けられたZ8/Z17Fのシステム。カーナビ内蔵のセンターユニットとフルデジタルスピーカーのセットだが、実はこの時は駆動部に他社製のLSIを採用していた。ところが今回は24.5MHzの超高速駆動を実現する、車載専用の高出力LSIを独自開発して搭載した。という意味では、実質的に今回のモデルがクラリオン・Full Digital Soundの初代モデルといってもいいだろう。

今回は、本体をシート下等に装着できるブラックボックス・タイプにしたのと、従来はなかったフルデジタルサブウーファーを用意したのが特徴。デモカーのスピーカーはフロントのフルデジタルツィーター(フルデジタルサウンドプロセッサーZ3に付属)、17cmフルデジタルスピーカーZ7、25cmフルデジタルサブウーファーZ25Wというフロント2ウェイ+サブウーファーの構成である。

さてその音だが、まずキレの良さが印象的だ。試聴時は調整がまだ不十分のようで、やや高域が強調気味なのと、音場感に違和感がある感じだったが、フルデジタルサブウーファーの低域から中域、高域にいたるまで音の立ち上がりが鋭く、生演奏を聴いた感覚に近いものがある。強調気味のフルデジタルツィーターの音を質感そのものは良く、シンバル等の響きもリアルに近い。また微小な音もはっきり再現できる解像度の高さも持っている。しかも大音量時だけではなく、小音量でも情報量が減った感じがしない。このあたりは、デジタル信号でダイレクトにフルデジタルスピーカーを駆動するメリットなのだろう。

今回は試聴できなかったが、スマートフォンやポータブルプレーヤーで再生したハイレゾ音源(最大96kHz/24bitまで)にも対応しているという。より情報量の多い音源だとFull Digital Soundはどう聴こえるのか、想像するとワクワクする。もしかしたら、その音はオートサロンで聴けるかもしれない。

純正システムでも幸せな音楽再生を実現する画期的システム

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岡本 伸史

カーAV快楽生活探求家

ドライブとクルマいじりの楽しみを30年以上探求し続けている快楽主義者。自動車生活を楽しくするためのカーAV選び&使いこなしを得意とし、カーAVカタログ誌やカー用品雑誌、ハイエンドカーオーディオやDIYのムック本など、多数のカーAV誌の刊行に編集記者として関わり、インプレッションやDIY取り付けの記事を寄稿してきた。現在は自動車関連雑誌や書籍、自動車用品や家電のカタログ、WEBの制作に携わる。
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シンプルなシステム構成、取付性の良さ、純正システムとの高い親和性、そして音質の高さを兼ね備える「Full Digital Sound システム」は、クルマを選ばず手軽に気持ちいい音楽を再生する新世代のカーオーディオだ。

音楽を聴くのならできればいい音で聴きたいと願う人は多いが、その一方でシステムの複雑化や大仰な取付を嫌がる人も多い。これまでのカーオーディオはいい音のためならシステムの複雑化やクルマに負荷をかけることを厭わないことが常識だった。しかしこの新世代の「Full Digital Sound システム」は、フルデジタルスピーカーに直接デジタル信号を入力するため、ハイファイシステムでは当たり前の外付けパワーアンプが不要で、配線も純正のスピーカー配線をそのまま使うことが可能だ。そのため、重量増や導入・装着コスト、電気使用量も最小限に抑えることができるという、エコカーにもぴったりの、ユーザーにもクルマにも優しいカーオーディオシステムとなっている。純正システムのスピーカー出力と接続することが可能で、純正メインユニットの交換ができないクルマにも簡単に装着できる。さらにスマホやデジタルポータブルプレーヤーのハイレゾを含むデジタル音源を追加することが可能で、純正システムはそのままでオーディオの使い勝手を飛躍的に向上させることができるのだ。

肝心の音質は、純正システムとは比べものにならないほど、クリアで解像力の高いものだ。音のレスポンスやキレがよく、調整による自分好みの音を作りやすいため、音楽を楽しく聴かせてくれる。試聴車にはフルデジタルサブウーファーが装着され、外部パワーアンプ無しというのが不思議なくらい低音の迫力が感じられた。また、このシステムではクルマによって異なる音楽再生環境を、きめ細かな調整ができるイコライザーやタイムアライメントによって整えることができ、リスナーの前方にステージを作り出し、ボーカルを目の前で再生することも可能としている。スピーカー交換だけではできない音質向上と音場再現の双方を実現し、なおかつ取り付けるクルマを選ばずクルマに負担をかけない、まさに新世代カーオーディオの姿を体現しているといえるだろう。

時代の端緒の音、Full Digital Soundの高い可能性

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鈴木 裕

オーディオ評論家

1960年6月18日東京生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。
オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター。
ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。2010年7月リットーミュージックより『iPodではじめる快感オーディオ術 CDを超えた再生クォリティを楽しもう』上梓。
オートバイのロードレースの元・国際A級レーシングライダー。
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1970年代に始まったデジタルオーディオはついにスピーカーまでフルデジタル化。その音は浸透力の高い素晴らしいものだ。省エネ/低電圧駆動という大きな特徴も持っている。その革新的なテクノロジーの音を是非体験してみてほしい。

SUBARU/BRZにインストレーションされたClarion Full Digital Soundのシステムを聴いた。特に小音量時の再生での音に高い魅力を感じた。浸透力の高い、音の形の崩れていない様子。エンピツにたとえるならばHの芯を細く削り、緻密に描いたデッサン画のようにさまざまな要素が聞こえてくる。ひとつひとつの音の粒立ちがはっきりしていて、立ち上がる力の強い感じ。基本的に聴感上のSN感がとても良く、色彩感は端正で、若干明るめに感じられる音。これがトゥイーターの2層、ウーファーの6層のヴォイスコイルから表現されるフルデジタルスピーカーの音なのだ。たしかに従来型のスピーカーユニットとは違う音の佇まいだ。

デジタルオーディオの始まりは1970年代だった。アナログの音の信号をデジタルにする。それは画期的なことで、1982年にはCD(コンパクト・ディスク)がスタート。決定的なSN感の良さをベースに、高い分解能や特有の表現力を獲得し、さらにそのテクノロジーはデジタル領域でのコントロール、DSPへと発展していく。帯域分割、イコライザー機能、タイムアライメントといった処理を、音を鈍らせることなく行えるようになった。そしてデジタルのまま増幅するPWMアンプが生まれて来たわけだ。

スピーカーにおけるデジタルテクノロジーはクラリオンによって2012年に誕生。フルデジタルフロントスピーカーシステム Z8/Z17F等といった製品として登場し、今回のプロダクツはその第2世代。消費電力が一般的なスピーカーユニットの5分の1以下、必要な電圧は半分以下というフィーチャーに未来を感じる人は少なくないだろう。電球が、低発熱/省エネのLEDになって製品の幅が決定的に変わったように、さまざまな変化がオーディオにも訪れる。

革新的なテクノロジーである。時代の端緒の音を是非、体験してみてほしい。

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