Japan[製品情報]

Full Digital SoundヘッドホンZH700FF 試聴レビュー by 野村ケンジ

2016年、Clarionが販売を開始したFull Digital Soundヘッドホン 「ZH700FF」。長きに渡り車載音響機器メーカーとして歴史を刻んできたClarionの新たな分野への挑戦、「ZH700FF」をオーディオライターの野村ケンジさんがじっくりと試聴。その印象を寄稿頂きました。年間300本を超えるヘッドホン・イヤホンの試聴を行う野村ケンジさんによる「ZH700FF」への評価とは?

Clarion 「ZH700FF」ファーストインプレッション

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フルデジタルサウンドヘッドホンZH700FF

なかなかどうして、面白い製品が登場してきたゾ。

Clarion初のヘッドホン「ZH700FF」を聴いたとき、いちばん最初に抱いたのがそんな感想だった。というのも、デザインも使用されている音響パーツも、はてはサウンドチューニングに至るまで、既存のヘッドホンとは大きく異なる要素が盛り込まれているからだ。

たとえば外観は、アルミやレザーを採用しつつモノトーン基調で纏め上げることで、高級モデルらしいシックさと上質感を演出しているが、同時に、アーム部分に大胆なスピンデザインを採用したり、ハウジングカバー部分に電池残量&充電状況を表示するカラーLEDを盛り込んだりと、クルマのメーターコンソール周りのようなハッと目を惹く大胆なスタイルに作り上げられている。

それ以上に個性際立つポイントなのが、ヘッドホンにとって最も肝心なパートでもある、音響技術と音響調整に関する手法だ。「フルデジタルサウンドヘッドホン」と銘打っているだけあって、この「ZH700FF」のサウンドシステムは、全てがデジタルパートによって作り上げられている。PC等とのUSB接続、スマートフォン等とのUSB接続、ポータブルプレーヤー等との光デジタル接続によって入力されたデジタルオーディオ信号をいっさいアナログ変換することなく、最終段のドライバーユニットまで伝達するシステムが採用されている(一方で汎用性を考えてアナログ入力も用意されているなど細やかな気遣いがなされている点も好印象だったり)。

デジタル音源からZH700FFへのフルデジタル伝送概念図
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フローティング・フラットドライバー

これは、ドライバーユニットにD-note技術を採用することで実現したものだが、実はこの技術に頼りきりではないのが「ZH700FF」の素晴らしいところ。その証拠に、ドライバーユニットは一般的なダイナミック型ではなく一部の高級ヘッドホンに使われている平面振動板をチョイス。さらに、音質低下の原因となるエッジやダンパーをなくした、フローティング構造の専用ドライバーを開発するなど、細部にわたって徹底した高音質への追及が行われているのだ。

また、「フルデジタルサウンドヘッドホン」であることは、音質以外にもいくつかの恩恵を生み出している。なかでも、大きなメリットとなっているのが消費電力の低さだ。「ZH700FF」に搭載されているフルデジタルシステムは、カーオーディオ用に開発されたものを基礎としている。こちらの世界では、近年はエコカー全盛時代ということもあって、カーオーディオ製品は音質だけでなく低消費電力であることも大きなテーマとなっているだという。そのため、この「ZH700FF」でもかなりのエコさが盛り込まれており、音質最優先のハイエンドヘッドホンでありながらも、光デジタル接続で約12時間、スマートフォンなどとのUSB接続でも約6時間ものバッテリー持続時間を実現しているのだという。確かに、このバッテリー持続時間は実用的で嬉しい。

もうひとつ、「ZH700FF」には注目すべきポイントがある。それは、装着感の良さだ。

外観デザインのイメージでは、なかなかのヘビー級と感じる人もいるだろうが、重心バランスが良好なのか、装着してみると意外なほど重さを感じない。さらに、密閉性の高さが素晴らしい。立体縫製によって形作られた厚手のイヤーパッドは、耳の周りを隙間なくすっぽりと包み込んでくれるため、外界からの騒音を大きく遮断できる。音楽に、存分に集中することができるのだ。また、長時間つけていても疲れなさそうな柔らかいイヤーパッドの感触といい、装着性についてはかなりの良質さを誇っている。

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ZH700FF試聴中の野村ケンジさん

とはいえ、ヘッドホンに関して最も肝心なのはやはり音質だろう。ということで、ロックやジャズ、クラシック、Jポップ、アニメソングに至るまで、様々なジャンルのハイレゾ音源を試聴してみた。

最初に感じたのが、拍子抜けするくらい普通の音だったこと。いや、正確にいわせてもらうと、普通の“スピーカーのような”音色に感じられたのだ。“フルデジタルシステム”と銘打った製品だけに、さぞやダイレクトな、ピュアピュア志向のキレッキレッなサウンドを聴かせてくれるのかなと思っていたのだが、実際は全く逆。とても自然な音色と、とても自然な広がり感を持ち合わせているのだ。

たとえばJポップを聴くと、ヴォーカルはかすれやファニーさなどの変調はいっさい感じない素直な歌声で、普段よりも優しい、丁寧な歌い方に感じられる。おかげで、普段より歌に込められた感情が強く表現され、楽しい歌はより楽しく、悲しい歌はより悲しいイメージとなる。対して打ち込み系のリズムパートは、ややおとなしめながら、キレが良いためグルーブは普段よりも高いくらいに思える。刺激臭が少ないのに、ノリが良いといったイメージだろうか。ジャズなどを聴いても同様で、ややライトな演奏なのにノリが良いため、プレーヤーがかなりご機嫌で演奏しているかのように感じられる。

いっぽう、オーケストラの演奏を聴くと、左右、前後にステージがほどよく広がっていて、シンフォニーならではのスケール感を楽しみつつ、楽器ひとつひとつの演奏まで細かく感じ取ることができる、特にアコースティック楽器、なかでも弦楽器との相性が良く、ヴァイオリンやチェロの演奏は、普段よりも優しげな表現に感じるくらい、自然な音色を聴かせてくれた。

このように、Clarion「ZH700FF」は、カーオーディオ、カーナビの老舗メーカーであるClarionが手がけたこともあってか、既存のヘッドホンとはひと味もふた味も違う、オリジナリティ溢れる製品に仕上がっている。そんな個性派モデルゆえに、いちど気に入ったら替えの効かない、唯一無二の愛機になってくれそうだ。

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野村ケンジ

ヘッドホンやカーオーディオ、ホームオーディオなどAV機器の記事をメインに、専門誌やモノ誌、WEB媒体などで活躍するオーディオビジュアルライター。なかでもヘッドホン&イヤホンに関しては、年間300モデル以上の製品を毎年試聴し続けている。また、ハイレゾ音源についても様々な関わりを持っており、アニソンレーベルのスーパーバイザーなども務めている。近年は、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」のアドバイザーとしてレギュラー出演するなど、活動の幅をさらに広めている。
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